職場のメンタルヘルスケア 会社・上司に求めれる対策と対応

2021年9月13日
職場のメンタルヘルスケア 会社・上司に求めれる対策と対応

働く人々のストレスと心の病は年々増加する傾向にあります。
業務による心理的負荷が原因で精神障害を発症した、あるいは自殺したとして労災認定が行われ、メディアでも取り上げられています。
職場全体でメンタルヘルスの理解を深め、心の健康づくりを推進しましょう。

メンタルヘルス(こころの健康)とは

「生き生きと自分らしく生きるために重要なことであり、3つの健康を意味している。」と厚生労働省では定義しています。

  1. 情緒的健康 自分の感情に気づいて表現できること
  2. 知的健康 状況に応じて適切に考え、現実的な問題解決ができること
  3. 社会的健康 他人や社会と建設的でよい関係を築けること

職場におけるメンタルヘルスケアの実施にあたっては、経営者・管理職・一般社員が重要性を理解する必要があります。

職業生活に関する悩み・ストレスの原因

メンタルヘルスの原因

人が感じるストレスは様々です。
職場の人間関係、業務内容、長時間労働、仕事量や質によるストレスもあれば、家庭や健康といった個人の問題によるストレスもあります。
では、どのような病気や症状として表れるのでしょう。 

ストレスを原因とする病気や症状
  • うつ病 
  • 躁うつ病
  • 統合失調症

うつ病は、人口の1~3%が発病していると言われてます。多忙や不安、人間関係によるストレスなどをきっかけに精神的・身体的な症状が出る病気です。
躁うつ病は、人口の0.5%が発病、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。
統合失調症は人口の1%が発症、脳機能に問題が起こることで生じるとされる精神病の一種で、幻覚や幻聴、妄想などの症状があります。

これらの病気や症状は、特別な人が発病発症するものではなく、誰にでも起こりうるものとして認識する必要があります。

メンタルヘルスの基本ケア

メンタルヘルスの基本的なケアは次の4つです。

  • セルフケア
  • ラインによるケア
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • 事業場外資源によるケア

メンタルヘルスケアの第一歩は自らがストレスに気づき対処する「セルフケア」ですが、職場や仕事内容に起因する場合、セルフケアだけでは、対処できないものがあります。

セルフケア

自分自身で行うケアを指します。
メンタルヘルスについて基本を学ぶことでストレスに気づき予防対処することもある程度可能になります。
また、年に1回実施が義務付けられているストレスチェックの判定で状況を把握することも重要です。

ラインによるケア

職場の管理監督者が行うメンタルヘルスケアです。
職場環境の把握と改善、労働者からの相談対応、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援など、職場の活性化が求められます。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医など専門的な知識を持つ産業保健スタッフと人事労務担当者がメンタルヘルス対策の計画や推進を行います。
産業医は、従業員規模50人以上の企業に選任義務があります。

事業場外資源によるケア

職場外の機関・専門家によるケアです。
上記の産業にも専門があるため、メンタルヘルスに対応できない場合もあります。
外部機関の協力を得ることで、効果的な対策を実施することが可能になります。

メンタルヘルスに対する会社の対応・対策 安全配慮義務

事業者には安全配慮義務があり、労働契約法第5条により定められています。
「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をするものとする。」また労働安全衛生法には、「労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」と定められています。

危険作業、有害物質への対策以外に、労働者のメンタルヘルスケア(こころの健康保持増進)をするために対策をするよう事業者には求められています。
メンタルヘルスケアが事業者に義務化されている制度として、ストレスチェック制度があります。

ストレスチェック制度

平成27年10月より、従業員が50人以上の事業場においてストレスチェックの実施が義務付けられています。(50人未満の事業場については努力義務とされています。)
定期的に実施することで、本人が抱えているストレスを把握し、適切な措置を講ずることが主な目的です。
本人が診断結果と向き合い、セルフケアを講ずることでメンタル不調を未然に防止する効果が期待できます。

上司に求められるメンタルヘルスケア対策

部下の行動に対する上司の対応

あなたが職場内の管理職である場合、いつもと違う部下の行動に注意して下さい。

  • 遅刻、早退、欠勤が増える。
  • 休みの連絡がない。(無断欠勤、無断遅刻)
  • 残業、休日出勤が増える。
  • ミスや事故が目立つ。
  • 仕事の能率が悪くなる。判断能力が低下する。
  • 服装が乱れたり、衣服が不潔になったりする。
  • 睡眠がとれていない。

部下の行動に対して、次のような対応が考えられます。

  • 部下の話を聞くことに重きを置き、否定しない。
  • 産業医に相談できる仕組みを作る。
  • 産業医と面談するように促す。
  • 本人の代わりに産業医に相談する。指示を聞く。
  • 部下の情報は正当な理由なく他に漏らさない。
  • ストレス要因を改善する。

仕事の負荷、自由度、環境、作業方法、人間関係、組織形態の視点から現状の調査、改善計画立案、対策の実施、改善効果の評価を行うことが求めれます。

休職制度の活用

上記のような対策を実施しても、メンタル不調者がゼロになるとは限りません。
症状が重くなり、働き続けることが難しくなると、退職を余儀なくされます。
退職の猶予措置として、一定の勤続年数以上の従業員に対しては、休職制度を設けている会社がほとんどでしょう。
しかし、休職と復職に関する訴訟、相談が多いことも事実です。

例えば、以下の点に注意が必要です。

  • 医師の診断書等に基づいて、休職の必要性、必な休職期間が十分に検討されていますか?
  • 復職できなかった場合や復職時の手続き方法等のルールを事前に従業員へ説明していますか?
  • 休職、復職に係る誓約事項を書面で取り交わしていますか?

せっかくの休職制度でトラブルが発生しないよう就業規則、社内書式を整えておきましょう。

最後に、今回のまとめ

メンタルヘルスケアの基本と職場における対策・対応について紹介しました。

メンタルヘルスの基本は以下の4つ。

  • セルフケア
  • ラインによるケア
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • 事業場外資源によるケア

個人で対処するセルフケアだけでは、仕事内容や人間関係の問題は対処できません。
職場全体や上司の対応・対策が重要になります。

事業所としての対策は、仕事の負荷・人間関係などの調査と改善の実施が求めれます。
また、ストレスチェックの活用や休職制度など従業員のメンタル不調を未然に防ぐ施策が必要となります。

企業がメンタルヘルスケアに積極的に取り組むことは、従業員の安全・安心支援、企業価値向上など多くのメリットがあります。
健全な組織・生産性の高い職場を目指しましょう。