融資の際の経営者保証に関するガイドラインとは?適用対象・条件を解説します

2021年9月11日
融資の際の経営者保証に関するガイドラインとは?適用対象・条件を解説します

不動産担保の種類と評価額の計算方法の記事で、物的担保について紹介しました。
ここでは、もう一つの人的担保であり、中小企業が融資を受ける際の経営者保証と経営者保証に関するガイドラインについて解説します。

経営者保証とは

経営者保証とは、企業が事業資金の融資を受ける際に、経営者やその家族が連帯保証人となる制度のことです。

事業経営が一定規模を超えると、個人の資金だけで会社を運営することは難しくなります。銀行などの金融機関から融資を受けることは、中小企業の資金調達して一般的な方法です。

経営者保証の金融機関におけるメリット

金融機関の経営者保証は、経営者への規律付けや信用補完があります。
中小企業では、経営者が個人資金を企業に貸し付けたり、財務諸表が監査を受けておらず会社経理と家計が混然していたりと法人・個人一体である場合が多いことから、金融機関が経営者保証を求めることは融資の債権を保全するという観点から合理的と言われています。

経営者保証は経営者にはデメリット?

仮に企業が返済できなくなり金融機関が連帯保証人に保証履行請求(返済請求)した場合、経営者は現預金を返済に充てます。
それでも困難であれば、自家用車や土地・建物等の個人の資産を処分して返済に充てることになります。
実態として経営者の大きな負担となっていました。

また、経営者保証は事業計画にも大きな影響を与えました。

  • 新規の事業展開
  • 事業再生
  • 事業継承
  • 廃業

いずれも、経営者保証よって負うリスクにより、思い切った展開を躊躇する傾向がありました。
これを解消する為に2014年2月に施行されたのが経営者保証ガイドラインです。

経営者保証ガイドラインとは?

経営者保証ガイドラインとは金融機関・企業・保証人の各関係者による適切な対応を促して弊害を解消し、中小企業の活力を促すというものです。
但し、このガイドラインは法的な拘束力は無く、あくまで自主的な準則という位置づけになっています。

経営者保証ガイドラインの適用対象

経営者保証に関するガイドラインの対象者は次の通りです。

  • 主債務者が中小企業であること。
  • 保証人が個人であり、主債務者である中小企業の経営者であること。
  • 主債務者・保証人の双方が返済に誠実で、債権者の請求により資産・負債等の財産状況を適時適切に開示していること。
  • 主債務者と保証人が反社会的勢力でないこと。

経営者保証なして融資を受けるための条件

また、経営者保証に関するガイドラインでは、経営者保証を外せる要件として次の3つを掲げています。

  1. 法人と経営者の関係の明確な区分・分離 
  2. 財務基盤の強化 
  3. 積極的な情報開示による経営の透明性確保

それぞれの条件について解説しましょう。

①法人と個人の分離

融資を受ける企業は、業務や経理、資産管理について企業と経営者の関係を明確にわける必要があります。
役員報酬・賞与・配当、オーナーへの貸付など、法人と経営者との資金のやりとりを「社会通念上適切な範囲」を超えないようにする体制を整備し、運用しなければなりません。

②財務基盤の強化 

財務状況・業績改善を通じた返済能力の向上に取り組み、信用力をあげる必要があります。
これは、経営者なしでも資金調達できるための取り組みです。

③経営の透明性確保 

金融機関からの情報開示に応じ、資産・負債の状況、事業計画、業績の見通しとその進捗などの情報を正確かつ丁寧に開示・説明することにより経営の透明性を確保することも重要な要件です。

また、金融機関が見るポイントとしては、上記の要件の他に内部留保にも着目していることも挙げられます。

ガイドライン策定後の融資の現状

経営者保証のない新規融資は徐々に増えていますが、経営者保証付きの融資が全体の9割となっています。

また、経営者の高齢化が進む中で中小企業の休廃業・解散件数が年々増加傾向にある問題もあり、事業承継を円滑化する為に経営者保証付きの融資の水準を適正化することが認識されています。

最後に今回のまとめ

金融機関が企業に保証を求める際は、保証人に対し保証の意味やリスク、契約締結の理由を十分に説明する義務を負っています。
上記に述べた通りまだまだ商慣行として残っている部分もあるので、新規融資を受ける際は経営者保証について必ず確認して下さい。

経営者保証に関するガイドラインと特則により、経営者保証なしでも金融機関から融資が受けれれる可能性が高まっています。
試算表等の提出を定期的に行うことはもちろんですが、財務内容を少しでも改善することで経営者保証を外す判断材料となります。
そこをしっかりと固めていくようにしましょう。