売上拡大のために中小企業の経営者が知っておきたい3つのこと

2021年6月16日
売上拡大のために中小企業の経営者が知っておきたい3つのこと
夢先案内人
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こんにちは、夢先案内人の鈴木敬です。
静岡県三島市や神奈川県小田原市を中心に、中小企業の会計業務のサポート・経営コンサルタントをしています。

今回から複数回に分けて中小企業で売上拡大を実現するための基本的な考え方について紹介します。
全体の流れを確認しましょう。

  • 第1回 売上拡大のために知っておきたい3つのこと
  • 第2回 売上のツボを知るための3ステップ
  • 第3回 拡大した売上から利益を残すための3ステップ
  • 第4回 売上拡大のツボを考える 2つの事例

経営の記事は専門用語が多くなりますが、丁寧に説明していきますのでご安心ください。
順次記事は公開していきます。

今回は【売上拡大のために知っておきたい3つのこと】として以下を解説します。

  • 経常利益とは
  • 変動損益計算書から目標の売上高を把握する
  • 現状の売上高を把握する

売上拡大を考える前に抑えておきたいポイントになるので、ご自身の会社でぜひ1度考えてみてください。

売上拡大の基本的な考え方

中小企業の経営者様や幹部の方と接していると、売上拡大にとても強い関心を持たれていると感じます。
しかし、次のことが考えられていないケースがあります。

  • 売上が利益に結びつくためのコスト構造改善
  • 利益やキャッシュ(お金)を最大にするために、どの分野でどのように売上を獲得するか

ん?何か難しいことを言っていると感じていませんか?

要は『儲かる体質を作り、儲かる分野の売上拡大する』のが基本的な考え方です。

売上拡大にあたっては、事前に「利益とキャッシュ(お金)が残る体質」を作りこみ、「それらが最大になる分野」を選んで活動していきます。

『儲かる体質を作る』と言われても何から手をつけるべきか難しいですよね。
まずは利益(経常利益)とは何か?を考えてみましょう。

① 経常利益とは?

経常利益とは、企業が通常行っている業務で得た利益です。
企業が毎年どれくらい稼げるかを表す大事な指標になります。

儲かる体質を作るとは、経常利益を出すことです。

損益計算書 変動損益計算書
売上高 売上高 C
△ 売上原価 △ 変動費 B
売上総利益
△ 販売管理費及び一般管理費 限界利益
営業利益 △ 固定費 A
△ 営業外利益
経常利益 経常利益

夢先案内人では経常利益を変動損益計算書で考えることを推奨します。
(変動損益計算書の解説は②目標売上高の算出をご覧ください。)

上図の変動損益計算書から経常利益の算出方法を確認しましょう。

利益(経常利益)=売上高(C)-変動費(B)-固定費(A)

利益を出す方法は大きく考えると3つになります。

  • A 固定費を削減する(いわゆる経費削減)
  • B 変動費を削減する(材料費や外注費、仕入などの削減)
  • C 売上高を上げる

一般的に自身でコントロールしやすい順番はA⇒B⇒Cとなります。

利益を出すためにいろいろな打ち手や方法がありますが大別するとこの3パターンになるはずです。
「売上拡大」をする前に是非抑えておきたいポイントです。

②変動損益計算書から目標の売上高を把握する

目標売上高と現在売上高にどのくらいのGAP(差額)があるのか、どのくらい売上高を上げれば良いかを考えるのが第一歩になります。

ところで、変動損益計算書と普通の損益計算書では何が違うか皆さんはわかりますか?

損益計算書 変動損益計算書
売上高 売上高 C
△ 売上原価 △ 変動費 B
売上総利益
△ 販売管理費及び一般管理費 限界利益
営業利益 △ 固定費 A
△ 営業外利益
経常利益 経常利益

売上高と利益(経常利益)は変わりません。
両者の違いは粗利益の考え方の違いになります。

ざっくりしたイメージですが、
損益計算書⇒制度会計(税務署に出す資料)
変動損益計算書⇒管理会計(利益を出すツボを見える化した資料)
となります。

世の中にはたくさんの業種や業態の会社があります。
その中で一定のルールに従って表したものが損益計算書になります。
皆さんはそれを税務署や借入をする際に銀行に提出します。
損益計算書の方が見慣れた書式かもしれませんね。

しかし、利益を出すツボを見える化するには変動損益計算書がおすすめです!!

変動損益計算書の活用法

変動費(売上高に比例して変動する費用、例:材料費、外注費など)
固定費(売上高にかかわらず毎月支払う費用、例:地代家賃、光熱費、人件費など)

と2つに分けることから始めます。
分ける基準は売上高に比例するか毎月固定で発生しているかで考えます。

例えば、同じ人件費でも日給制の警備員さんと固定給の社長さんでは分類が異なります。
警備員さんは現場に出て働いて給料が発生するので変動費、社長さんは仕事に関係なく毎月固定給なので固定費といった感じです。

損益計算書で集計する売上原価と販売費及び一般管理費という分類にするよりも、変動費と固定費に分けた方が、利益(経常利益)をイメージしやすくなり、シミュレーションに向いています。

必要な利益はいくらなのか?固定費や変動費の削減を先に考え、必要な売上高を最小にして売上拡大を考えるようにしましょう。
売上拡大のために販売促進費などが増加する可能性もありますので注意が必要です。

ぜひ一度、ご自身の会社の変動損益計算書を確認してみてください。
会計事務所に依頼すると作成してもらえるはずです。

現状目標GAP
売上高10,00015,0005,000
変動費4,0005,000
限界利益(粗利益)6,00010,000
固定費5,0005,000
利益(経常利益)1,0005,000

③現状の売上高を把握する

複数の商品や事業がある場合、売上分類ごとの利益構造を明らかにして、伸ばすべき売上分野を明らかにします。
可能ならば売上分野ごとの売掛金と買掛金の金額を把握して、運転資金差をリンクさせることが出来れば資金(お金)も加味した分析ができるようになります。

A商品B商品C商品合計
売上高10,00015,00010,00035,000
変動費7,0005,0006,00018,000
限界利益(粗利益)3,00010,0004,00017,000
固定費8,0004,0004,00016,000
利益(経常利益)△5,0006,00001,000

上の表で考えてみましょう。
合計で見ると少し利益が出ています。

商品別に見るとA商品が赤字、B商品が黒字、C商品がトントンですね。
この場合、B商品の売上を伸ばせればより多くの利益が出せそうです。
このように、全体で見るより個別で考えた方がより具体的にイメージができます。

A商品のように採算が合わない場合、縮小・撤退して全体の利益や資金(お金)を優先させるケースもあります。
売上の分類は商品別・顧客別・店舗別・エリア別など企業の実態に合わせて考えていきます。
皆さんの業種や業態に合わせて各自で考えてみましょう。

今回のまとめ

中小企業の売り上げ拡大のために知っておきたいことを3つ紹介しました。

売り上げ拡大の基本的な考え方
『儲かる体質を作り、儲かる分野の売上拡大する』

①経常利益を理解する
儲かる体質を作る=利益を出すための3つの方法
②目標の売上高を把握する
変動損益計算書を使って現状の売上高と目標の売上高のGAPを把握
③現状の売上高を把握する
売上分類ごとに利益を作成、伸ばすべき売上分野を把握する

今回は以上になります。