コロナ融資のリスケを検討するときに考える3つのこと

コロナ融資のリスケを検討するときに考える3つのこと
夢先案内人
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こんにちは、夢先案内人の鈴木敬です。
静岡県三島市や神奈川県小田原市を中心に、中小企業の会計業務のサポート・経営コンサルタントをしています。

【コロナ融資で借りた資金が残っているうちに返済を止める(リスケをする)のは正しい判断なのか?】

2020年4月より新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、金利や信用保証料さらに返済を据え置く特例融資(ゼロゼロ融資)、いわゆる「コロナ融資」が利用され始めて2年が経過しました。

最近になって、冒頭のような質問が担当する中小企業の経営者の方からよく聞かれるようになりました。

コロナ融資を利用しているほとんどの企業が3年間の元本返済の据え置きを選択しているためにゼロゼロの期間が終わる時期、つまりは返済がはじまる時期は2023年5月ごろから本格化することが予想されます。

返済が始めるまで1年を切ったこの時期に、手元に資金があるうちに返済を止めて資金繰りを安定させるという検討は間違っていないと思います。

冒頭の質問の解答は、次の3点を見極めて判断するということになります。
❶新規に資金調達が、しにくくなることに問題はないか?
❷業績回復が見込めない状況か?
❸半年先の資金繰りが厳しくなりそうか?

この記事では、その理由とコロナ融資のリスケを検討するときに考える3つのことを確認していきます。

リスケとは

リスケは略語で、正しくは「リスケジュール(reschedule)」と言います。

ビジネスでよく使われるリスケには『スケジュールの組み直し』『融資の返済計画の見直し』の2つの意味があります。
今回の記事では後者の『融資の返済計画の見直し』の意味になります。

リスケとは簡単に言うと「銀行融資の返済条件を変更すること」で借入条件の変更を意味します。
資金繰りが苦しくなった事業者が、銀行などの金融機関から借りるときに約束した支払条件を、銀行との話し合いによりそれまでの条件よりゆるく変更することです。

具体的には
月額返済額を当面の間減額する
返済期限を延長する
などの変更を行います。

業績が悪化して、資金繰りが苦しくなった事業者が検討すべき手段で、銀行などに交渉して返済を一定期間猶予してもらうことで経営の立て直しを図っていきます。

通常は融資で借入れをすれば、決まった金額の返済をしていきますが、様々な事情でお金が返せなくなることがあります。
銀行にお金が返せなくなると、借入金は不良債権扱いとなり、最終的には法的な回収措置がとられ会社は倒産せざるを得ません。
しかし現在銀行では、金融庁からの要請もあり、しかるべき理由があり、経営改善計画を策定することでリスケに応じてくれます。

コロナ禍におけるリスケの現状

コロナ禍の現在、リスケは通常時よりも容易になっています。

2022年4月から中小企業活性化協議会が「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)の運用を開始したからです。

これまでのリスケでは事業改善の見直しが要件に含まれていましたが、今回の特例リスケでは事業改善の見直しの要件は除外され、新型コロナの影響で最近1か月の売上高が前年または前々年同月より5%以上減少した企業などが対象とされました。

つまり、返済を止めようと思えば簡単に銀行などの金融機関が応じてくれる環境になったといえます。

コロナ融資のリスケ時の4つのデメリット

いくら返済を止めることが簡単になったといっても、返済を止めることは当初契約した条件を変更することになります。
今は「コロナの影響でしょうがない」と特例扱いしてくれますが、返済の条件変更は約束違反をしたことには変わりありません。
原則としては正常先ではない扱い(銀行では要注意先、要管理先と分類)となることを認識しておく必要があるでしょう。

想定されるデメリットは以下の通りです。
①金利は高めに変更される
②個人保証を要求される
③プロパー融資(保証協会をつけない融資)など新規融資が難しくなる
④すべての金融機関を同一条件で返済を止める必要があるため、調整が大変である

積極リスケと消極リスケ

中小企業の資金繰りを見ていて現場にいる立場で感じるのは、早い時期から資金繰りの心配をする経営者は案外、会社の運営も安定している傾向にあると思います。
心配をするということは試算表や預金残高などをこまめに把握しているケースが多いからです。

逆に、あまり資金繰りに関心がなく、資金調達は厳しくなってから金融機関に相談すればいいというスタンスをとる経営者は、相談のタイミングがあまりにギリギリで金融機関も新規の融資の審査する時間が取れず追加融資が出来ず、返済を止めるしかないというケースが少なくありません。
この選択肢のないリスケを夢先案内人では消極リスケと呼んでいます。

一方で、前者のかなり早い段階からリスケの検討をする場合、仮にリスケとなったとしても返済が正常化するまでの時期、リスケからの卒業も比較的早く訪れるように感じます。
前もって計画して早めに返済を止めて、余剰資金をうまく利用して業績回復を待つという方策です。

新たに資金調達もできるけれども返済を止めて毎月の返済額を減らした方が結果として資金繰りが安定するケースを見かけます。

リスケ検討の具体例

具体的なケースを見てみましょう。

・年商は1億2,000万円(月商1,000万円)で飲食店を経営
・コロナ禍で3期連続赤字で財務は債務超過
・コロナ融資を受けて手元には3,000万円の現預金がのこっている
・業績は少しずつ回復の兆しは見えてきている

あなたが経営者ならばどうしますか?
①もう少し先になってリスケを考える
②今リスケを考える
金融機関はこの状態で返済を止めてくれるでしょうか?

答えは、この企業の現在の資金繰りの状況によります。

これは日本の中小企業金融の特徴と言えますが、多くの中小企業が毎月の返済額が異常なほど大きくなっています。
この企業が毎月200万円返済しているとします。
半年(6か月)で1,200万円の返済になります。

この企業の支払いは銀行返済だけではありません。
仕入や給料、家賃などの支払もあるでしょう。
日々の資金繰りでいうと月末に大きな金額のお金を支払い、翌月の月初に入金があるような場合も考えられます。
3,000万円あるといってもそれが日によっていくらまで減っているのか、常時いくらないとお金が回らなくなるのかを日頃からつかんでおく必要があります。

夢先案内人では、手元資金として月商1か月分は確保できていないと危険だと伝えています。
この企業の場合だと最低1,000万円は残しておきたい金額です。

そうなると余裕のある金額は2,000万円です。
しかしそれも200万円×10月の銀行返済で流出するので、その時点で危険水域に入ってしまいます。

さらにコロナ融資の据え置きが終わると○○万円の返済が増加するなど、半年先以上の資金繰りを予測したうえで金融機関に相談すると金融機関はかなり早い段階でリスケに応じてくれるはずです。

こうした具体的な資金繰りと最低限確保したい額の説明をしないと金融機関は、リスケの必要性に理解してくれず、「まだ早くないですか?」で問題先送りとなるケースも想定できます。
そうならないためにも一度、自社の資金繰りを考えてみてはいかがでしょうか。

今回のまとめ

コロナ融資のリスケを検討するときは、次の3点を見極めて判断するということになります。
❶新規に資金調達が、しにくくなることに問題はないか?
❷業績回復が見込めない状況か?
❸半年先の資金繰りが厳しくなりそうか?

この3つが当てはまれば、早めのリスケ検討をお勧めします。
何よりこの3点を示す資金繰り計画をメインバンクに相談してみることが賢明です。

今回は以上になります。