
不動産担保の種類と評価方法を解説!融資を左右する仕組みとは?

不動産を担保にして融資を受ける際、「どの種類を選べばいいのか?」「評価方法によって融資額はどう変わるのか?」と悩む方は多いでしょう。
担保の仕組みを理解せずに手続きを進めると、融資額が思ったより低くなったり、予期せぬリスクを背負う可能性もあります。
本記事では、不動産担保の種類とその違い、企業融資での活用方法、銀行ごとの評価基準、そして経営者が交渉時に活かせるポイントを詳しく解説します。
目次
不動産担保とは?役割と重要性
不動産担保とは、借入金の返済を確実にするために、不動産を担保として差し入れる仕組みのことです。万が一、借主が返済できなくなった場合、債権者(金融機関など)は担保となる不動産を売却することで貸し付けた資金を回収できます。
不動産担保の重要性
不動産担保は以下のような場面で重要な役割を果たします。
融資の審査を通過しやすくなる
高額な資金調達が必要な場合、信用力だけでは融資が難しいケースがあります。
不動産担保を提供することで金融機関のリスクが軽減され、融資を受けやすくなります。”
低金利での借入が可能
無担保ローンと比較すると、不動産担保ローンの方が低金利で借入できることが多いです。
事業資金の安定化
企業経営者が事業拡大のために資金調達を行う場合、不動産担保を提供することで大口融資を受けやすくなります。
不動産担保の利用にはメリットがある一方で、返済不能になった場合には担保を失うリスクもあるため、慎重に検討する必要があります。
不動産担保の種類
そもそも担保は大きく分けて「人的担保」と「物的担保」の2つがあります。
人的担保とは、保証人を担保とする方法です。
代表的なものが法人が借り入れをする場合に代表者が連帯保証人となるケースです。
不動産担保は物的担保の一つで、 「抵当権」 と 「根抵当権」 に分かれます。
抵当権
抵当権は、1回の融資に紐づいて担保を設定する場合に利用されます。
住宅ローンを組む際に、不動産を担保にして抵当権を設定するのが一般的です。
借主が借入金を返済できない場合、債権者(銀行など)が抵当権を実行し、不動産を競売にかけて債務を回収できます。
抵当権の主な特徴
- 借入を完済すると抵当権も消滅
→ 借り入れ(住宅ローンなど)を完済すると、抵当権の抹消登記が可能です。 - 借り入れが他の人に譲渡されると抵当権も移動する
→ 銀行が貸付債権を他の金融機関に譲渡した場合、抵当権も移ります。 - 借り入れを一部返済したとしても抵当権も一部消滅とはならない
例えば、借入の半分を返済しても、抵当権が自動的に半分消滅するわけではありません。 - 担保不動産が滅失した場合、保険金請求権が債権者に移転する
→ 火災などで担保不動産が失われても、火災保険金の請求権を債権者が優先的に取得できます。
根抵当権
根抵当権は抵当権とは対照的です。
根抵当権は、一定の範囲内で繰り返し借入を行う際に設定される担保権です。
特に、事業資金を頻繁に借り入れる企業が利用することが多いです。
借り入れのたびに抵当権を設定していたら、手続きも煩雑ですし費用もかかりますよね。
その無駄を排除したものが根抵当権です。
根抵当権のメリット
- 新たな借入のたびに担保を設定する必要がない
→ 事業資金の融資で頻繁に借入を行う企業にとって、事務手続きの負担が軽減されます。 - 融資枠の範囲内であれば繰り返し利用可能
→ 一定額の上限内であれば、借入と返済を繰り返せるため、資金調達の自由度が高まります。 - 資金繰りの柔軟性が高い
→企業の運転資金や短期借入に適している。
企業融資では、抵当権と根抵当権のどちらが多く使われるか?
企業融資では、設備投資など単発の資金調達には「抵当権」が、運転資金の確保や継続的な借入には「根抵当権」が利用される傾向があります。
抵当権が向いているケース
根抵当権が向いているケース
企業融資における不動産担保の役割と注意点

企業が銀行から融資を受ける際、不動産を担保にすることは一般的な方法です。
しかし、担保提供にはメリットだけでなく、リスクも伴います。
不動産担保が企業融資で求められる理由
企業向け融資では、事業の収益性や財務状況を評価する「信用力融資」だけでは十分な融資が受けられないケースがあります。
銀行は貸し倒れリスクを軽減するため、不動産を担保に提供するよう求めることが多いのです。
銀行が不動産担保を求める主な理由以下のものです。
- 企業の信用力だけでは審査が厳しい
- 担保があることで融資額を増やせる
- 銀行のリスクを減らし、低金利の融資が可能になる
例えば、企業が3億円の設備投資資金を借りたい場合、無担保では1億円までしか借りられないケースもあります。しかし、不動産を担保にすることで、希望額に近い融資を受けられる可能性が高まります。
経営者個人が不動産を担保にする際のリスク
中小企業の場合、法人所有の不動産だけでなく、経営者個人の自宅や土地を担保に差し出すケースも珍しくありません。しかし、これには慎重な判断が必要です。
- 会社の業績が悪化し返済不能になると、自宅などの個人資産を失う可能性がある
- 事業失敗時に個人破産につながるリスクが高まる
- 銀行が経営者に連帯保証を求める場合があり、負担がさらに増える
法人名義で不動産担保を設定する、またはプロパー融資(無担保融資)の可能性を検討することも選択肢となります。
不動産担保の評価方法
不動産担保の評価額を算定する際には、土地と建物の評価を行い、それぞれに担保掛目(たんぽかけめ)を適用します。
担保掛目とは、金融機関が融資可能額を決定する際に用いる評価率のことです。
一般的に、担保掛目は 70〜80% に設定されることが多いです。

土地の評価方法
土地の評価額は、通常 「路線価」 を基準に算出されます。
土地評価額の計算式
土地評価額 = 路線価 × 土地面積(㎡)
路線価:200千円/㎡、土地面積:100㎡ の場合
土地評価額 = 200,000円 × 100㎡ = 20,000,000円(2,000万円)
建物の評価方法
建物の評価額は 「建築単価」「床面積」「現在価値割合」 をもとに計算されます。
現在価値割合とは、耐用年数に対して建物が建ってからどれだけ経過したかを表します。
建物評価額の計算式
建物評価額 = 建築単価 × 床面積 × 現在価値割合
建築単価:170千円/㎡(木造)、床面積:120㎡、耐用年数:22年、経過年数:2年、
現在価値割合 = 1 -(2年 ÷ 22年) = 約0.91 の場合
建物評価額 = 170,000円 × 120㎡ × 0.91 = 18,544,000円(約1,854万円)
担保評価額とは?算出方法と注意点
担保評価額とは、金融機関が不動産を担保として評価する際の金額です。
担保評価額の計算式
担保評価額 =(土地評価額 + 建物評価額)× 担保掛目
土地評価額:2,000万円、建物評価額:1,854万円、担保掛目(70%)の場合
担保評価額 =(2,000万円 + 1,854万円)× 70% = 26,980,000円(約2,698万円)
担保評価額が低く見積もられる理由
銀行が算出する不動産担保の評価額は、市場の実勢価格よりも低く見積もられることが一般的です。
その理由は、銀行が担保物件を競売にかけた際に想定される売却価格を基準に評価するためです。
銀行の不動産評価は処分目線で評価するため、実勢価格よりも評価が低くなるのです。
金融機関ごとの評価基準の違い
銀行や金融機関によって、不動産担保の評価基準は異なります。
一般的に、メガバンクは評価が厳しく、地方銀行や信用金庫は比較的柔軟に評価する傾向があります。
金融機関の種類 | 評価基準の特徴 | 担保評価額の目安(市場価格比) |
---|---|---|
メガバンク | 保守的で厳格な評価 | 50%〜70% |
地方銀行 | メガバンクより柔軟 | 60%〜75% |
ノンバンク | 審査は柔軟だが金利が高い | 70%〜80% |
例えば、1億円の不動産を担保にしてメガバンクに融資を申し込んだ場合、担保評価額は5,000万円〜7,000万円程度になることが多いです。一方、ノンバンクでは評価額が7,000万円〜8,000万円と高めに設定されることもありますが、その分、融資金利は高くなる傾向があります。
事業用不動産の評価が低くなる主な要因
事業用不動産(工場・倉庫・オフィスビルなど)は、住宅よりも担保評価が低くなる傾向があります。
その理由は以下の通りです。
- 流動性が低い(売却しにくい)
- 用途が限定され、買い手がつきにくい
- 老朽化した建物は、価値が大幅に下がる
特に、工場や特殊用途の不動産は市場での流動性が低く、担保評価額が市場価格の50%以下になることもあります。
不動産の担保評価を上げるためには、定期的な修繕や、収益性を証明できるデータ(賃貸契約など)を提出することが有効です。
会社経営者が不動産担保を提供する際の交渉ポイント
銀行との交渉次第では、担保価値を最大限に活かし、より良い融資条件を引き出すことが可能です。
担保掛目(融資額の割合)の引き上げ交渉
- 事業計画を明確に提示し、銀行に納得してもらう
- 他の金融機関の評価と比較し、競争原理を利用する
連帯保証の回避
- 法人名義の担保提供を優先し、個人保証を避ける
- 信用保証協会の保証を活用し、リスクを分散する
金利引き下げの交渉
- 担保を提供する代わりに、低金利での融資を求める
- 銀行との取引履歴(過去の返済実績)を活かす
今回のまとめ
不動産担保は、企業が銀行融資を受ける際に重要な役割を果たします。
特に、高額な融資を低金利で受けたい場合、担保の提供は有効な手段となります。
不動産担保の活用は、企業の資金調達を有利に進めるための強力な手段です。
しかし、経営者個人の不動産を担保にする場合はリスクもあるため、慎重な判断が求められます。
企業の成長に向け、不動産担保を適切に活用しながら、最適な融資方法を選択しましょう。