コロナ禍が長引く中、日本政策金融公庫では2回目のコロナ融資を、各民間金融機関でも追加の借入を検討する事業者も増えてきていると思います。
2回目や追加の融資となってくると、各金融機関は慎重な対応をしてくることが考えられます。
この記事では融資申込に必要となる試算表と資金繰り表の重要性について説明していきます。
試算表とは
試算表とは、決算書ができるまでの間に貸借対照表と損益計算書がどのような状況にあるか、月単位や特定期間で集計し、試算した表です。
試算なので決算書よりも信頼性は低いですが、決算から数ヶ月も経てば会社の財務状況は変化してしまうことから試算表を参考にする意味があると考えられています。
金融機関の担当者は経営者から業界の現状や今後の見通し等をヒアリングし、現状でいえばコロナ禍における経営改善策や今後の資金調達、金融機関の支援等を検討する必要があります。
この検討をするために試算表が必要なのです。
金融機関担当者が試算表で着目するポイント
貸借対照表
1.現金預金、売上債権、棚卸資産がどのくらい変動しているのか
2.短期借入金・長期借入金の残高がどのくらい変動しているのか
3.仕入債務がどのくらい変動しているのか
4.自己資本比率が低下していないか
貸借対照表では特に現金預金がどの程度変動しているかが着目されるポイントです。
また、コロナ融資で借入金が増加傾向にある事業が多い中で短期借入金や長期借入金の変動なども着目点になります。
自己資本比率が低下していないかを確認することで経営の安全性も見ています。
損益計算書
1.売上の状況・粗利益率がどのくらい変動しているのか
2.販売管理費で削減できる科目はないか
3.営業利益+減価償却費でプラスかどうか
売上状況や粗利益率がどのくらい変わっているか、販売管理費などの経費が削減できる科目はないかを確認しています。
その上で、営業利益+減価償却費がプラスかどうかをチェックします。
本業で利益が出ているかを判断するためです。
最近では給付金受給も増加してきているため、営業外収益で各種給付金を得ているかも確認しています。
資金繰り表とは
資金繰り表とは「企業の資金がいつ・いくら足りなくなるのか」を確認するための資料です。
融資の申込金額が妥当なのかを判断するために必要になります。
資金繰り表はお金の出し入れだけで計算するので、多くの経営者は作成することを苦手としており、自社で作成している会社はまだ少ないのが実情です。
売上・仕入と入金・支払のタイミングは一般的にどの業種でもずれます。
そのため損益が黒字であっても、まだ入金がないために現金預金がマイナスであったり、その逆の状態も起こります。
金融機関では、損益とは違う視点で企業の実態を把握することができるので、資金繰り表も重要視しています。
特に、融資を実行することで事業者の資金繰りがどう改善するのかを資金繰り表で示すことがポイントです。
金融機関の担当者が、銀行内で稟議を書く上では、経営者からヒアリングをして作成するケースもありますが自社で作るように試みてください。
自社でいくら必要かわかるメリットや、数字に強い経営者として金融機関からも信頼を得ることができるようになります。
最後に
ここ1年はコロナ禍の影響で、いわゆるコロナ融資を金融機関はスピード重視で十分な審査を経ずに実行されたと言われています。
しかし、2回目や追加となると業績や財務内容の悪化が予想されるため、金融機関は慎重に対応する必要がでてきます。
こうした中で、試算表や資金繰り表を融資相談の段階で準備をしていくことが大切になります。
しっかりと管理している経営者と金融機関から評価もされ、交渉もスムーズに進むことが考えられます。
「試算表」と「資金繰り表」、この2つの資料をぜひ自社で作成してみてください。